誤食シリーズ①チョコレート

犬のチョコレート中毒

人間には大人気のチョコレートですが、犬にとっては中毒物質となります。
犬に食べさせてはいけないものとしてはネギ類と同様に有名であり、家庭にあることも多いため、夜間救急病院でも診ることが多かったです。

チョコレートの中毒物質

チョコレート中毒の原因となる物質はメチルキサンチン(テオブロミン,カフェイン)という成分で、中毒症状は体重あたりの摂取量に応じて現れます。

  • 軽度:嘔吐、下痢、多飲など
  • 中度:活動亢進、頻脈など
  • 重度:振戦、ケイレン発作など

中毒物質がどの程度含まれているかはチョコレートの種類によって異なりますが、カカオ成分が濃いものほど高濃度に含まれています。

ホワイトチョコ << ミルクチョコ < ダークチョコ < ココアパウダー

この順番で含有量が増えていき、個体差もありますが軽度の症状を発症するのは

  • チワワ(2~3kg)が1kgのホワイトチョコレートを誤食
  • T.プードル(4~5kg)が板チョコ(ミルクチョコ)1枚を誤食
  • M.ダックス(7~8kg)が板チョコ(ダークチョコ)半分を誤食

くらいがだいたいの目安となります。また、カカオ70%など高濃度のものは危険度が非常に高いです。ホワイトチョコレートでの中毒症状は現実的にはほとんど起こりえないですね。

およそ軽症量の2倍で中度、3~4倍で重度、5倍以上で致死量となります。

チョコレート中毒の治療

治療内容は誤食した量と経過時間により変化します。
誤食した量が少なければ様子を見ることも多いですが、ある程度の量を食べている場合は初期治療として催吐処置を行い、中毒を起こす前に体外へチョコレートを排出することを目指します。

催吐処置-初期治療

一般的な催吐処置は誤食後1~2時間以内が適応となることが多いのですが、チョコレートの場合は少し異なります。

チョコレートは胃内で溶けると胃にへばりついたように残留するため、誤食後3時間までは適応となり、誤食量が多ければ3時間経過以降も催吐処置にて出てくることが多いです。

以前あった例として、缶に入ったGODIVAのチョコレートを丸ごと食べた大型犬は誤食後6時間ほど経っていたのですが、催吐処置を行ったところ大量に溶けたチョコレートが出てきたこともあります。

また、中毒の危険性が高い場合は胃洗浄まで行うこともあります。

初期治療終了後

初期治療が終わった後、または既に胃内にチョコレートが残っていない場合は、状況に応じて軽症であれば点滴や胃薬などの支持療法、中毒物質を吸着させるための活性炭の投与などを行います。

重症で既に痙攣などの臨床症状が出ている場合はそれぞれの症状に応じた治療と胃洗浄などを並行して行っていくこともあります

チョコレート誤食におけるその他の問題

チョコレートの誤食で来院した際、問題はチョコレートだけに留まらない場合も多いです。

膵炎、嘔吐下痢などの消化器症状

チョコレートは一般的に脂肪分を多く含有するため、メチルキサンチン中毒とは別で食欲不振、嘔吐、下痢などの消化器症状を呈することがあります。

これは誤食後時間が経過してから生じるため、誤食量が少なかったとしても数日は注意する必要があります。

特に膵炎は重症化すると命に関わるため、様子がおかしければ必ず動物病院にて診察を受けましょう。

チョコレートと同時に誤食したもの

チョコレートを誤食した際によくあるのが

  • 外側の箱もかじって食べてしまった
  • プラスチックの包み紙も一緒に食べてしまった
  • チョコに包まれたアーモンドやナッツも丸飲みした
  • ペロペロチョコを棒ごと丸飲み

など、その他のものを同時に誤食していることも多いです。

場合によってはチョコレートより同時に食べてしまったものの方が、腸閉塞を起こす可能性があるなど危険な場合もあります。

同時に食べた物、経過時間、現在の様子、持病などで治療や処置が変わるため、万が一誤食してしまった場合は獣医師と対応について相談をしてください。

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